上の4つの数字は、浚淵科技の先進半導体グレードPPメンブレンフィルターカートリッジ(ろ過精度5 nm、10インチ、2-222フラット、新品)を対象とした金ナノ粒子チャレンジ試験の結果で、工業技術研究院(ITRI)による第三者認証を受けています。数字そのものは優秀ですが、プロセスエンジニアや購買担当者にとって本当に役立つのは、その中身を読み解くことです。99.41%はどのような条件で測定されたのか、透過量に換算するとどれくらいか、他社フィルターが表示する「5 nm」とそのまま比較できるのか。本記事では、このデータを一つずつ分解して解説します。
- なぜナノレベルのろ過効率は金ナノ粒子で測るのか?
- このデータはどのような条件で測定されたのか?
- 99.41%は何を意味するのか?透過率とLRVへの換算
- 表示ろ過精度が1段階違うと、5 nm粒子の透過量はどれだけ変わるか?
- なぜ20 nmのろ過効率が5 nmよりわずかに低いのか?
- ろ過効率の数字を比較する前に確認すべき6つの質問
- 5 nm PPメンブレンフィルターはどこに適しているか?
- よくあるご質問
なぜナノレベルのろ過効率は金ナノ粒子で測るのか?
ミクロングレードのフィルターのろ過効率は、液中パーティクルカウンターで上流・下流の粒子数を直接数えることができます。しかし粒子が小さくなるほど、散乱光は弱くなります。レイリー散乱の領域では散乱光強度がおおよそ粒径の6乗に比例するため、粒径が10分の1になると信号は100万分の1にまで弱まります。一桁ナノメートルの領域では光学的な方法による直接計数は難しく、別の「見える」方法に切り替える必要があります。
金ナノ粒子(Gold Nanoparticles、略称GNPまたはAuNP)は、現在ナノレベルのろ過効率試験でよく使われるチャレンジ粒子です。その理由は次の4つです。
ミクロンからナノまでの試験方法の全体像は、「液体フィルターのろ過効率とは?一般グレードからナノレベルまでの試験方法の違い」をご参照ください。
このデータはどのような条件で測定されたのか?
ろ過効率の数字は、必ず試験条件とセットで見る必要があります。このデータの試験条件は次のとおりです。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 試験対象フィルター | ナノグレードPP先進メンブレンフィルターカートリッジ、ろ過精度5 nm |
| フィルター形式 | 10インチカートリッジ、2-222フラット |
| ろ材 | PP |
| フィルターの状態 | 新品(製造直後のフィルター) |
| チャレンジ粒子 | 5 nmおよび20 nmの金ナノ粒子(2種類の粒径でそれぞれ試験) |
| 上流濃度 | システムに導入する金濃度500 ppt |
| サンプリング方法 | 上流・下流で各3本採取し、平均値と標準偏差を算出 |
| データの検証 | 工業技術研究院(ITRI)による第三者認証 |
99.41%は何を意味するのか?透過率とLRVへの換算
ろ過効率が99%を超えると、パーセント表示ではどれも同じように見えてしまいます。そこで透過率とLRV(Log Reduction Value、対数減少値)で見ると、差がはっきり表れます。
ろ過効率 =(1 − 下流濃度 ÷ 上流濃度)× 100%
透過率 = 100% − ろ過効率
LRV = log₁₀(上流濃度 ÷ 下流濃度)= −log₁₀(透過率)
(LRVを計算するときは透過率を小数で代入します。例:0.59%なら0.0059)
| チャレンジ粒径 | ろ過効率(平均) | 標準偏差 | 透過率 | LRV | 下流金濃度(推定) |
|---|---|---|---|---|---|
| 5 nm | 99.41% | 0.18% | 0.59% | 2.23 | 約2.95 ppt |
| 20 nm | 99.08% | 0.04% | 0.92% | 2.04 | 約4.6 ppt |
下流金濃度は上流の500 pptと平均ろ過効率から逆算した値で、オーダーを示すためのものです。報告書に記載された実測値ではありません。
直感的に言い換えると、5 nmの金粒子1,000個あたり、約6個がフィルターを通過するということです。よく見かけるろ過効率の数字を並べてみると、LRVの意味が見えてきます。
| ろ過効率 | 透過率 | LRV | 粒子1,000個あたりの通過数 |
|---|---|---|---|
| 90% | 10% | 1 | 100個 |
| 95% | 5% | 1.3 | 50個 |
| 99% | 1% | 2 | 10個 |
| 99.41% | 0.59% | 2.23 | 約6個 |
| 99.9% | 0.1% | 3 | 1個 |
表示ろ過精度が1段階違うと、5 nm粒子の透過量はどれだけ変わるか?
浚淵科技の半導体グレードPPメンブレンフィルターカートリッジの製品ページには、超純水条件で実測した別のデータが掲載されています。10 nmグレードのフィルターで、GNP 10 nmのろ過効率が95%、GNP 5 nmのろ過効率が90%です。同じPPメンブレン製品ラインの2つのろ過精度を並べ、同じ5 nmの金粒子がそれぞれどれだけ通過するかを見てみましょう。
2つのデータは別々の試験によるもので、条件が完全に同じとは限りません。ここでは傾向を示す目的でのみ使用しています。
同じ5 nmの金粒子に対して、10 nmグレードのフィルターは10%を通過させ、5 nmグレードは0.59%しか通過させません。透過量の差は約17倍です。
この比較からは、もう一つ重要なことがわかります。ろ過精度の表示には統一された定義がないということです。上記の10 nmグレードのフィルターは、10 nm粒子に対するろ過効率が95%であり、99.9%ではありません。各社のフィルターが表示する「X nm」が、どの程度のろ過効率で定義され、どの粒子で測定されたのかは、それぞれ異なる可能性があります。そのため2本のフィルターを比較するときは、ろ過精度の表示だけを見るのではなく、同じチャレンジ粒径でのろ過効率またはLRVを確認してください。ろ過精度の選び方は「液体フィルターのろ過精度はどう選ぶ?要求条件から適切なろ過精度を判断する」をご参照ください。
なぜ20 nmのろ過効率が5 nmよりわずかに低いのか?
直感的には、粒子が大きいほど捕捉しやすいため、20 nmのろ過効率は5 nmより高くなるはずです。ところが、このデータでは99.08%対99.41%となっています。詳しく見ると、注目すべき点がいくつかあります。
- 差はサンプリングのばらつきより明らかに大きい。2組の3本サンプリングの標準偏差はそれぞれ0.18%と0.04%にすぎず、再現性は良好です。0.33ポイントの差は標準偏差より明らかに大きいため、サンプリング上の偶然ではなく、2つの試験の間の系統的な差に起因する可能性が高いと考えられます。
- ICP-MSが測定するのは「総金量」。装置は、金がナノ粒子として存在するのか、溶存態の金イオンとして存在するのかを区別できません。金ナノ粒子は金塩を還元して作られるため、チャレンジ液に微量の溶存態金が残っていると、その分はメンブレンの孔径がどれほど小さくても通過します。しかも、5 nmと20 nmの2種類の標準液でその含有量が同じとは限りません。
- ろ過効率が99%以上の領域では、わずかなバックグラウンドが結果を左右する。上流500 pptで計算すると、一方のチャレンジ液にふるい分けできない金が約1.6 ppt多く含まれているだけで、0.33ポイントの差が生じます。
- 2組は別々に調製し、別々に実施した試験である。粒径の異なる標準液では、表面安定剤も、粒子とメンブレン表面との吸着作用も異なる可能性があります。
ろ過効率の数字を比較する前に確認すべき6つの質問
ナノレベルのろ過効率報告書を受け取ったら、どのメーカーのフィルターであっても、次のチェックリストで確認できます。
- チャレンジ粒子は何か?金、PSL(ポリスチレン微粒子)、SiO₂は表面性質が異なり、メンブレン表面との吸着作用も異なるため、数字をそのまま置き換えることはできません。
- チャレンジ粒径はどれくらいか?「5 nmグレードのフィルターのろ過効率」と「フィルターの5 nm粒子に対するろ過効率」は別物です。
- 上流濃度はいくらか?下流の測定値は検出下限からどれだけ離れているか。チャレンジ液自体に含まれる溶存態のバックグラウンドを測定、または差し引いているか。
- どの流体で、どれくらいの流量で測定したか?超純水での結果が、実際のプロセス薬液での結果と同じとは限りません。
- 新品か、フラッシング後のフィルターか?各組のサンプリング回数は何回か。標準偏差は報告されているか。
- 誰が測定したか?第三者データと自社データでは重みが異なります。報告書が粒子仕様、化学マトリックス、流量、サンプリング方法を完全に開示しているかも確認します。
浚淵科技のナノレベルフィルター捕捉効率試験サービスでは、お客様が指定する化学マトリックスと流量のもとで、5–60 nmグレードの金ナノ粒子、PSL、SiO₂標準粒子を用いてフィルターをチャレンジし、上流・下流で各3本を採取します。報告書には平均値、標準偏差、試験条件の詳細をすべて記載します。
5 nm PPメンブレンフィルターはどこに適しているか?
このフィルターの位置付けは、半導体前工程で使う薬液のファイナルフィルター、および原料のプレフィルターです。PPの強みはコストと環境負荷の低さで、耐熱温度は約80 °Cまで、耐薬品性は次の2つの分類をカバーします。
純水と各種希酸・希アルカリ
有機溶剤系のプロセス薬液
よくあるご質問
5 nmのフィルターは、なぜ液中パーティクルカウンターで検証しないのですか?
光学的な計数は粒子の散乱光を利用していますが、散乱光強度は粒径が小さくなると急激に低下するため、一桁ナノメートルでは直接計数することが困難です。金ナノ粒子とICP-MSの組み合わせは、「金元素の濃度を測る」方法に切り替えて間接的にろ過効率を算出するもので、pptレベルでの定量が可能です。
99.41%は新品のデータですが、一定期間使用すると変わりますか?
このデータは製造直後の新品フィルターで測定したものです。使用中のろ過効率は負荷、薬液、差圧などの要因に影響されるため、本データが使用後の性能をそのまま表すものではありません。確認が必要な場合は、使用済みフィルターを同じ方法で試験することができます。
自社のプロセス薬液でろ過効率を測定できますか?
可能です。浚淵科技のラボでは、お客様が指定する化学マトリックスと流量で標準粒子を導入し、プロセス条件に合わせてチャレンジ濃度を取り決めます。ご依頼の際は、フィルターの公称ろ過精度、実際に使用するプロセス薬液、目標流量をあわせてお知らせください。チャレンジ粒子と試験条件を選定する際の根拠となります。
同じ5 nmの場合、PPとPTFEのフィルターはどう選べばよいですか?
まず薬液と温度を確認します。超純水、希酸・希アルカリ、フォトレジスト、一般的な有機溶剤で、温度が80 °C以内であれば、PPにコスト面の優位性があります。強酸化性の酸や高温薬液にはPTFEが必要です。4大材質の詳しい比較は「液体フィルターの材質はどう違う?PES・PTFE・PP・UPEを徹底比較」をご覧ください。
ろ過精度は細かいほど良いのですか?
いいえ。ろ過精度が細かいほど、同じ流量での差圧が高くなって使用可能な流量が下がり、フィルターが早く目詰まりするおそれもあります。プロセスで捕捉すべき粒径と歩留まりリスクから逆算し、「必要十分」なグレードを選ぶべきです。
出典
- 浚淵科技『先進半導体グレードPPメンブレンフィルターカートリッジ』ろ過効率実測データ(工業技術研究院による第三者認証)
- 浚淵科技「半導体グレードPPメンブレンフィルターカートリッジ」製品ページ(GNP 10 nm/5 nm、超純水での実測)
- 浚淵科技「ナノレベルフィルター捕捉効率試験サービス」試験方法と装置仕様
